「産学連携」プロジェクト 「産学連携」プロジェクト

Overview

A社の新商品開発に対する情熱は、担当支店の吹田支店にとどまらず、本部や他の支店を通じて大学も動かす原動力となった。産学連携の新しい形が、今まさに誕生しようとしている。

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Project Member

  • 吹田支店 支店長
    吹田支店 支店長

    望月 尚道

    Takamichi Mochizuki
  • 難波南支店 融資課
    難波南支店 融資課

    阪本 滉一朗

    Koichiro Sakamoto
  • 大阪工業大学知的財産学部 学部長
    大阪工業大学
    知的財産学部 学部長

    林 茂樹

    Shigeki HayaShi
 

※所属部署名等は取材当時のものとなります。

PROJECT
TRIGGER
通常の産学連携では、
課題が解決できない。

関西みらい銀行吹田支店と、製造業を営むA社とのお付き合いは、もう30年以上にもなる。これまで通常の預貸金取引に加え、新工場建設の際には設備投資の面でもサポートしてきた。
吹田支店長の望月は、まずお客さまの話を聞くことを基本のスタンスとしている。一方的に銀行側の提案を行うのではなく、お客さまの事業内容や経営課題、今後のビジョンについて、じっくりとヒアリングするのだ。特に関西みらい銀行では、海外進出支援や人材紹介といった金融以外の分野でも課題解決の提案ができるため、まずは商談の間口を広げ、ビジネスのヒントを探すことを普段から心がけている。
ある日、望月はA社からある悩みを打ち明けられた。高齢者や要介護者向けの新商品開発を考えているものの、部分的な技術の面で長らく頓挫してしまっているのだという。A社はある分野の商品で国内トップシェアを誇る。しかし、これからの超高齢化社会において、A社が手掛ける商品にどれだけオリジナリティを加えられるのかが開発上の課題となっていた。

PROJECT TRIGGER

その分野における技術面のサポートは専門性が高く、支店では対応が難しいと判断した望月は、地域応援部と連携をとることにした。地域応援部であれば、ビジネスマッチングや産学連携など、技術開発面でのソリューション実績も多い。望月は地域応援部の担当者に相談の上A社のもとを訪れ、商品の特徴や求める技術の内容について改めて説明を聞いた。
まず初めに検討したのは、大学の研究室に対して共同開発を持ちかけることだった。しかし、企業側が求める技術と大学側の研究内容がうまくマッチングしないケースがほとんどで、さらに膨大な時間とコストがかかってしまうことがわかった。通常の産学連携の技術相談では不調に終わってしまう・・・。そこで白羽の矢が立ったのが、難波支店の融資課に籍を置く新入社員の阪本である。

PROJECT
MISSION
支店の垣根を越え、
新入社員が奮闘する。

阪本は大阪工業大学の知的財産学部を卒業し、さらに同大学の知的財産専門職大学院を修了していた。ちなみに知的財産学部のある大学は、全国で大阪工業大学1校だけだ。それだけ特殊性の高い学問なのである。
知的財産に関する知識を企業の成長・発展のために活かしたい、という思いがもともと阪本のなかにはあった。関西みらい銀行に入社を決めたのは、さまざまな業界の中小企業をサポートすることができると思ったからだ。現在は難波南支店の融資課で、決算書の財務データ登録や海外送金をはじめとした外国為替業務を担いながら、銀行業務の基礎を学んでいる。

PROJECT MISSION

地域応援部からA社の商品開発についての相談を受けたとき、阪本は耳を疑った。入社してほんの数ヶ月の新入社員に声がかかるなんて、想像もしていなかった。上司に報告すると、「別の支店だろうが、新入社員だろうが関係ない。お客さまのためになるのなら頑張ってやってみろ。きっといい経験になる」と、力強く後押ししてくれた。
阪本は、まず依頼内容を確認し、類似かつ同種の特許を情報公開している人がいるのではないかと思い至った。そこで独立行政法人 工業所有権情報・研究館が運用する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使って調査を開始する。J-PlatPatは誰でも閲覧できるサイトだが、検索条件やキーワードを入力する際に専門的な知識が求められた。
そうして調査を進めていくと、とある個人の研究家が、A社が探し求める技術を開発し、実用新案権の登録をしていることが判明した。ただ、その権利者とコンタクトをとり、A社と結びつけるのは、阪本ひとりの力では難しい。そこで彼は、母校の教授に協力を仰ぐことにした。

PROJECT
RESULT
知的財産戦略を
推進する金融機関。

PROJECT RESULT

大阪工業大学からは、すぐに調査を引き受ける旨の回答があった。さらに、もし仮に共同開発となった場合には、ゼミ単位・学部単位で協力してくれるという。その後、大阪工業大学での専門的な調査を経て、今回の案件に関してはA社と実用新案とのライセンス契約により技術の活用が可能で、類似周辺特許の権利侵害もないことがわかった。さっそく権利者宛に主旨説明の手紙を送ると、先方からは「私が開発した技術を見つけ出してくれてうれしい」という、前向きな返事が返ってきた。

大阪工業大学 知的財産学部長の林教授は、「欧米や中国などに比べて、日本は知的財産について無頓着すぎる」と警鐘を鳴らす。製造業にしろ、サービス業にしろ、日本には優れた技術を持った中小企業が多い。しかし彼らは、自分たちの競争力の根源ともなるその技術を、ホームページ上などで安易に公開してしまっている。どの情報をオープンにし、どの情報をクローズにするのか。その判断が、知的財産戦略を推進するうえでもっとも重要になってくるのだという。
とはいえ、中小企業が知的財産の専門家を自社で抱えるというのは現実的ではないだろう。そこで、今回の事案のように、ファイナンスにとどまらないソリューションサービスを展開する地域金融機関の存在価値が高まってくる。林教授は、「関西みらい銀行にその先陣を切ってほしい」と大きな期待を寄せる。

AND
NEXT…
さらなるソリューションサービスの
多様化を。

AND NEXT…

A社は地域応援部のアテンドで実用新案の権利者の元を訪れ、無事に面会を果たした。すべての課題がクリアになったわけではないが、現在、A社では引き続き商品開発が進められているところだ。A社からは「今までいろんな銀行や企業に相談したけど、本気で動いてくれたのは関西みらい銀行さんだけだ。ありがとう」という感謝の言葉をもらった。
吹田支店長の望月は、「お客さまが商品開発をする際に、知的財産というノウハウが必要であることを初めて知った。このような課題解決の手法をパッケージ化し浸透させることで、さらにお客さまの課題に踏み込み、結びつきを強めていくことができるだろう」と語る。

AND NEXT…

また、難波南支店の阪本は、「今回、お客さまの課題を見つけたのは吹田支店。自分が営業としてお客さまを担当したとき、今回のような課題に気づくことができなければ、専門知識を持っていたとしても意味がない。自分の強みを活かせるよう、まずは銀行員としての力をつけたい」と、成長を誓った。
本来、産学連携とは、新技術の研究開発や新事業の創出を目的として、大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携することをいう。

しかし、そのような従来の発想では、今回の課題は解決できなかっただろう。ビジネスが多様化するなかで、金融機関としてもソリューションサービスをさらに多様化していく必要があるのだ。
前例はない。だからこそ、関西みらい銀行がやる意味がある。

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