「あべのば」プロジェクト 「あべのば」プロジェクト

Overview

関西みらい銀行 阿倍野支店内に併設されたフリースペース『あべのば』は、銀行との取引の有無にかかわらず、待ち合わせや休憩場所として開放されている。無料のイベントやセミナーも随時開催。ネットでなんでも完結する時代に、リアルなつながりを生む場として注目を集めている。

SCROLL

Project Member

  • 業務開発部 主任
    営業統括部 主任

    前冨 文葉

    Fumiha Maetomi
  • 阿倍野支店 副支店長
    阿倍野支店 副支店長

    上田 隆規

    Takanori Ueda
  • 阿倍野支店 お客さまサービス課 支店長代理
    阿倍野支店 お客さまサービス課 支店長代理

    上野 功一

    Kouichi Ueno

※所属部署名等は取材当時のものとなります。

PROJECT
TRIGGER
若い世代の知名度を
上げたい。

2016年6月、阿倍野支店の移転計画にあわせ新店舗開設プロジェクトが始動した。20代後半から30代前半(当時)までの社員5名がさまざまな部署から招集され、前冨もメンバーに名を連ねることになる。プロジェクトを指揮する営業統括部の上司からは「これまでにない、まったく新しい形態の店舗をつくってほしい」と告げられた。
店舗に併設されるスペースではあるが、銀行の営業スペースとは切り離されるため、自由なアイデアでデザインできる。そのことが逆にメンバーを悩ませた。当社をはじめ、他社にもない“銀行らしくないアイデアを出す”ということに戸惑い、発想が凝り固まってしまったのだ。違う業態同士のコラボレーション事例をネットで調べ、各自が情報を持ち寄る。前冨はさまざまな商業施設に足を運び、日常生活のなかでもアンテナを張り巡らせた。

PROJECT TRIGGER

もっと若い世代からの知名度を上げたい、と前冨は考えた。若い世代が口座をつくるとき、ほとんどの場合、知名度で銀行を選ぶため、残念ながら、メガバンクよりも先に地方銀行が候補に挙がることはあまりない。その選択肢に関西みらい銀行が入るためのツールとして、この店舗を活用することはできないだろうか。
たとえば、Wi-Fiや電源を自由に使え、学生が勉強できるスペースとして開放する。そして、若い世代だけではなく、地域の人たちにもっと気軽に立ち寄ってもらえるように、ドリンクコーナーを設置して、コーヒーを飲みながら読書を楽しんでもらえるようにもしよう。高いと思われがちな銀行の敷居を低くし、堅いと思われがちな銀行のイメージを払拭する。これまで銀行に接点のなかった人たちに交流の場を提供することで、関西みらい銀行が、さらにいえば、銀行のあり方そのものが大きく変わるのではないか、と思った。

PROJECT
MISSION
街に、リアルな
つながりの場を。

PROJECT MISSION

銀行の店舗らしくない、やわらかな印象の壁材や床材。カラフルなインテリアもプロジェクトメンバーの感性で選んだ。普段は無機質なオフィス家具に囲まれている前冨も、空間の完成予想図にカタログから切り取ったおしゃれなソファやチェアの写真を配置しながら、検討に検討を重ねた。インテリアコーディネーターに依頼しなかったのは、自分たちの考えたコンセプトが薄まってほしくないと思ったからだ。また、店舗の名前『あべのば』も自分たちで考えた。「学びの場」「交流の場」「憩いの場」「くつろぎの場」などさまざまな形で利用してもらえる場として、また「阿倍野」に根差した長く親しまれる場所になってほしい。そんな想いを込めて付けた名前だ。

くないと思ったからだ。また、店舗の名前『あべのば』も自分たちで考えた。「学びの場」「交流の場」「憩いの場」「くつろぎの場」などさまざまな形で利用してもらえる場として、また「阿倍野」に根差した長く親しまれる場所になってほしい。そんな想いを込めて付けた名前だ。

PROJECT MISSION

『あべのば』オープン後は、自分たちで企画をし、月2回の頻度でイベントを開催した。取引先や近隣の店舗に声をかけ、イベントプレゼンターを募る。さらに、告知のためにチラシを配ったり、SNSで発信したり、店頭で呼び込みを行ったりもした。
化粧品メーカーを招いてのメイクアップセミナーでは、普段あまり銀行に来ることのない20〜40代の女性で会場が満席となった。また、阿倍野・天王寺地区一帯で開催される音楽フェス『ABETEN STREET BUTTERFRY』の会場のひとつとして『あべのば』を提供。改めて地域とのつながりや一体感を感じることにもなった。
インターネット上で簡単に手続きや買物ができる時代だからこそ、逆にリアルなつながりの場が見直されつつあるのではないか、と前冨は思う。『あべのば』という空間が生まれたことで、実際に若い世代が足を運んでくれるようになり、接点はできた。次は、どうやって関西みらい銀行をアピールするか、ということが課題となる。

PROJECT
RESULT
発見の場から、
感動の場へ。

PROJECT RESULT

やがて「あべのば」の運営は、営業統括部から阿倍野支店に移されることとなった。副支店長の上田とお客さまサービス課の上野が中心となり、ホームルームと題したミニセミナーを毎日開催している。
18時15分から30分間、仕事帰りの社会人をターゲットに、住宅ローンや保険、資産運用、iDeCo、相続などについてわかりやすく解説する。『あべのば』には1日に約100人、休日になると200人近い来場があり、常時10人程度が本を読んだり、コーヒーを飲んだりして、思い思いにくつろいでいる。そんなひとたちに耳を傾けてもらうために、上野たちは自分の趣味の話(歴史やゲーム、御朱印コレクションなど)を織り交ぜたり、金融セミナーや音楽ライブなど多彩なイベントを開催することでアプローチし続けている。
また阿倍野支店は、関西みらい銀行で唯一、セブンデイズプラザを設置している。セブンデイズプラザとは週7日、夜7時まで相談可能の窓口のことである。ミニセミナーからセブンデイズプラザに誘導するスキームを整えたことで、実際に成約に結びついた事例も多い。
『あべのば』は、自然に人が集まる場所になった。ただ、単なる休憩場所で終わらせるつもりはない。発信する情報をアップデートし、発見の場から感動の場へとステージを上げていかなければならないのだ。お客さまに新たな価値を提供するため、上田と上野は今日も挑戦を続ける。

AND
NEXT…
地域に根ざし、
地域の人の声を聴く。

AND NEXT…

地道な宣伝活動や、利用いただいた方の口コミのおかげで、『あべのば』の知名度はどんどん上がってきている。当初は「イベントを開催しませんか?」と、こちらからお願いして回っていたのに、今では「ぜひイベントを開催させてほしい」という依頼が引きも切らない。そして、この銀行らしくない取り組みは、地域を活性化させるとともに、阿倍野支店の来店者数増・取引増にも貢献した。確かな相乗効果が、そこにはあったのだ。
地域に根差し、地域の人の声を聴く。それは地方銀行として本来あるべき姿である。しかし、インターネット等を通じた非対面の取引が増加している昨今では、それが難しくなってきているのも現実だ。そんな中、この『あべのば』は今までとは違った角度から地域とのリアルな繋がりを生み出す場を提供することで、これからの地方銀行のあり方の可能性を広げたとも言える。
このプロジェクトを通じて、前冨、上田、上野の3人は口を揃えて、「銀行」の枠を超えた目線で物事を考えられるようになった、と言う。
既成概念にとらわれない空間作りから始まったこのプロジェクトは、今までの銀行にはなかった視点を生み出し、さらに進化を続けている。前例のないみらいに向けた挑戦は、まだまだ続く。

「あべのば」プロジェクト